1,ノロウェイの黒ウシ

ある日、あたしは、大人のためのおはなし会へ行きました。

まだ、“おはなしの初心者” だったあたしは、

そこで、すばらしい体験(たいけん)をしました。

その時、聞いたお話は、「ノロウェイの黒ウシ」という、イギリスの昔話でした。


あらすじ・・・・・

三人姉妹(しまい)のすえの娘(むすめ)が、黒ウシのおよめさんになってもいい、
と言ったため、黒ウシが、娘を、むかえにやってきます。

黒ウシのせなかにのった娘は、ウシの左の耳から、食べ物を食べ、
右の耳から、飲み物を飲んで、旅をつづけます。

じつは、黒ウシは、悪い魔女(まじょ)にすがたを変えられた、 王子だったのです。
娘のやさしさで、夜だけは、王子の姿にもどることができました。

王子は、「悪魔(あくま)とたたかってくる間、大きな岩の上にすわって、
ぜったいに動かずに、待っていてほしい。」と、娘にたのみます。

娘は、みうごきひとつしないで、待っていますが、
王子が勝った知らせがとどいた時、
おもわず、足を組みかえてしまったため、
王子は、娘を見うしない、会うことができません。
そこで、娘は、世界中をめぐっても、王子をさがしだそうと、旅に出ます。

さまざまな困難(こんなん)をくぐりぬけ、
娘はやっと王子に、会うことが出来ますが、
魔法(まほう)をかけられた王子は、娘のことを、すっかり忘れています。
その上、その日は、王子と魔女との、結婚式(けっこんしき)だったのです。

娘は、旅のとちゅうにもらった、ふしぎな木の実をわって、
魔女に結婚式を、一日、また一日と、のばさせ、
娘は、王子の部屋に入っていきますが、
王子は、魔女にねむり薬をのまされ、ねむってばかりいました。

娘が、さいごの木の実をわった日に、
王子は、娘に気づき、全てを思い出し、娘をだきしめます。

力をうしなった魔女は、国からにげ出し、帰って来ませんでした。

そして、王子と娘は、結婚し、しあわせにくらしました。

お話を聞いていた、あたしには・・・・・

岩の上で、じっと待ちつづける娘が見え、

娘をさがしまわる王子の姿(すがた)が見えたのです。



そして、ろうそくが消され、電気がつくと、お話の中の娘は消えうせ

そこには、語り手の女の人が、すわっていました。

おはなしの世界にいたとき、あたしは、まわりにいた、たくさんの人たちのことは

すっかりわすれてしまうほどでした。



それほど、心をうばわれた、この日の “おはなしの世界の体験” は

この先も、あたしが、おはなしを語りつづける、心のささえになりました。

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