ちび誕生物語 |
ちび誕生物語(たんじょうものがたり)
今からもう15年ほども前のことです・・・。 ある日のこと、あけみ はウィーンの街(まち)で 一さつの愛(あい)らしい絵本に出会いました。 あけみは、その本がとってもすきになりました。 絵本の中の、ちっちゃなちびは、 落ちこんでいたあけみを、心の底(そこ)から元気づけてくれたのです。 あけみ 「なんて、すばらしい本! ぜったい、いつか 日本の子どもたちや、大人たちにしょうかいしたい!」 それから、ず〜〜っと月日はたちましたが あけみは、ちびの本を、大切に、大切に持っていました。 ダス クライネ イッヒ ビン イッヒ ドイツ語のタイトルは・・・『Das kleine Ich bin Ich』 意味は・・・・小さな わたし は わたし そして、ついにちびが紹介(しょうかい)されるチャンスがやってきました。 あけみの友だちのゆうくんが、 「よい本を出したい!」 という夢(ゆめ)をもって、出版社(しゅっぱんしゃ)を作ったのです。 あけみはさっそく、ちびの出てくるこの絵本の話をしました。 ゆうくん 「そうか、それなら、この本を日本で出そうよ!」 そして、日本語の「にぎやか色のちび」の翻訳(ほんやく)がはじまりました。
ウィーンに住んでいたあけみは ちびの絵本を日本語に翻訳しながら、思いました。 あけみ 「これを読んで、日本の子どもたちは、どんな風に感じるのかしら? この言葉は、子どもたちにわかりやすいかしら? あぁ!日本で、子どもたちに読んでみたいな。」 あけみは、その気持ちを、 日本に住んでいる友だちのチカとおひさまに話しました。 チカとおひさまは、おはなし会で子どもたちと絵本を、楽しんでいる仲間です。 チカ・おひさま 「それならわたしたちが、翻訳(ほんやく)した絵本を、 日本の子どもたちに読んであげるわ。 そして、子どもたちの声を、あけみに届けてあげるね。」 あけみ 「まぁ、ほんと!うれしい♪」 ということで、ウィーンにいる、あけみと、日本の大阪にいるチカとおひさまの メールでの、やりとりがはじまりました。
さて、あけみとチカとおひさまは、それぞれ、はなれたところに住んでいるので 三人が集まって話をすることは、できないはずなのに どうやって、話し合うことが出来たのでしょう。 これは、その時の原稿(げんこう)の一部です。 こんな風に、原稿(げんこう)にコメントを入れ、三人でメールでやりとりしながら いろんなお話をしていったのです。
はじめ、このお話は、小学校の3・4年生以上くらいじゃないとむずかしいのでは・・・、 という意見もあちこちからありました。 あけみ 「う〜ん。ちびが 『わたしは、わたしで いいんだ!』 って気づくところ、 むずかしいなあ。」 原文を日本語にすると・・・ 『だってわたしはここにいる! ここにちゃんと立ってる! わたしはわたしでいいんだ!』 と、なるのだけど、これでちびの気持ちが、 しっかりと伝(つた)わるかどうかが心配でした。 あけみ 「チカ!おひさま!これを、みんなに読んでもらってくれる?」 チカもおひさまも、翻訳(ほんやく)とちゅうの『にぎやか色のちび』を 子どもたちや、おはなし会のなかまに聞いてもらって さっそく、あけみに、メールで報告(ほうこく)しました。 おひさま 「わ〜ん、どうしよう!子どもたち、ここのシーン、ピンとこないみたい。 うれしさが子どもたちから伝わってこないの〜。」 あけみ 「ええっ!ほんと?! ショックだぁ! やっぱり、『わたしはここにいる』っていうだけじゃ、 『わたしは わたしで いいんだ!』っていう風には思えないんだ!」 チカ 「オーストリアでは、この本は、何才くらいの子が読んでいるの? 日本の子たちと、オーストリアの子たちでは 考え方がちがうのかなぁ。」 あけみ 「この本は、4才くらいの子にも、人気があるのよ。」 チカ・おひさま「そんな小さな子でも、『わたしは わたしで いいんだ!』 と言ったちびの気持ちがわかるのね。」 あけみ 「ドイツ語と日本語では、『自分』についての考え方がどうちがうのか、 よく考えてみようよ。」 そこで、あけみとチカとおひさまは、ドイツ語と日本語のちがいについても考えました。 ドイツ語では幼稚園(ようちえん)くらいまでは、親も子も、まわりのおとなも、 友だちも、みんながおんなじことばづかいで話します。 年上とか年下がなくって、みんなが横ならびになっています。 つまり、それは、どういうことかと言うと・・・ 親子の会話での、ちがいをくらべてみると。
おひさま「日本では、小さな子が親に対して、『きみ』なんて言う子はいないわね。」 チカ 「親も、子どもの前では、『わたしはね・・・』とは言わないで、 『お母さんはね・・・』って言うよね。」 あけみ 「だから、ドイツ語では、一人一人が、 『わたしは、お父さんやお母さんと同じ一人の自分なんだ。』って、 小さいころから、いつも感じているんだと思うの。 日本では、ことばの使い方でも、いつもおとなが、子どもの上にいて つつんでくれているので、子どもは、一人の自分っていう気持ちには、 なかなか、なれないんじゃないかしら。」 チカ・おひさま 「なるほど〜。」
今、子どもだけでなく、大人も、 自分が、すきになれないとか・・・ 自分は、だれなのか、とか・・・ 自分のしたいことが見つからないとか・・・ 自分自身(じぶんじしん)を、みうしなうことがあります。 でも、どんな時でも、自分らしく 『わたしは わたしで いいんだ!』と思えたら、 きっと、前に歩き出す、力になるはずです。 道にまよったら、ちびのあの、まん丸おめめを思い出してください。 そして、大きな声で・・・・・ 『わたしは わたしで いいんだ!』 と、さけんでください すると、どこからか 『おまえさんは おまえさん。』って、あまがえるの声が 聞こえるかもしれません。
あけみとチカとおひさまは・・・ なんとか、『にぎやか色のちび』を、子どもたちに、読んでほしい! どうしたら、ちびの気持ちを、日本語でしっかりと表すことができるのか。 そんなことを心に思いながら、メールでの話し合いを進めていきました。 最初は、まだ会ったこともないのに、しかも、メールのやり取りだけで これほど、心を開いて、話し合えるとは、思ってもみませんでした。 「こんなことを言ったら(書いたら)、どう思われるかしら?」 「自分の思っていることを、うまく伝えるのって、むずかしいな。」 と、相手のことを気にするあまり、思い切った意見を言えなかったり 遠まわしな言い方をしたりすることもありました。 でも、翻訳(ほんやく)をしているあけみは、言いました。 あけみ 「この本をいいものにしたい!! チカやおひさまは、子どもたちの気持ちをよく知っているから どんどん、感じたことを言ってね。」 そうです!! 信頼(しんらい)して、自分の思いを伝(つた)えること! そして、心を広くして、それを受け止めること。 だれが正しいとか、どっちが勝ったとかではなくて いいものにするには、どうしたらいいか、心を合わせて考えること。 気が付いたら、3人は、 いいものを作ることに、夢中になっていました。 それぞれの力を合わせて、作り上げるよろこびで いっぱいになっていました。 あけみとチカとおひさまの3人は、 『にぎやか色のちび』という、絵本の完成(かんせい)といっしょに こんなすばらしい宝物(たからもの)も、手に入れることができました。
「にぎやか色のちび」が出版され、 ゆうくんや、あけみ、チカ、おひさまの見守るなか、 ちびは、読者のみんなのところへと、出発しました。 ちびは、読者のみんなと、どんなお話をしているのかな? と、わたしたちは、思いました。 幼稚園(ようちえん)や、保育園(ほいくえん)の、お友だちができたのかな? 小学校の友だちとは、どんなお話をしているのかな? 学校をお休みしているお友だちもいるかな? 中学校や大人の人とも、ちびは、お話しているのかな? あけみとチカとおひさまは、 ちびが仲(なか)よくなった、友だちと、 みんなでおしゃべりできるといいなぁって思いました。 そして、このホームページを作ることになりました。 だから、みなさん。 ここで、ゆっくりとおしゃべりして行って下さいね。
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